手掴みでかき集めて並べては眺めてみた。

 

とあるフィクションの作品について。

 

不貞を働いた(とだけいうと語弊がある。第三者によりドラッグで判断能力を奪われた状態ではあったものの恋人以外の女性と肉体関係を持ってしまった)男性を彼の恋人である女性が(間接的に)(無関係な人と恋人、どちらを殺すか選べと言われて恋人を選んだ)殺すことを決断する(そしてそのことを肯定していると見受けられる)描写があった。

 

浮気するような(そもそもそれまでにも誠実とは言えない態度の描写があった)恋人を“お焚き上げ”することで彼女は救済された(観客たちはそれを見て溜飲を下げている)という意見を(私の誤読でなければ)見かけたのだけれど、果たしてそうだろうか。

不貞行為を働いた恋人を罰する/復讐する、というだけなら殺人以外の手段もあったのではないかと思う。

 

 

好きなのに、どうしようもなく上手く行かなくなってしまった。おまけに明確な罪を相手が犯してしまった。それでも冷める、という状態/相手への無関心に至らなかった、ならば。

死んでしまえば相手と言葉を交わせない、相手との関係の改善は期待できないが悪化することもない。好意も嫌悪も時とともに少しずつ濾過されるあるいは変質していくが相手の新たな行動で傷つけられることはない。相手を傷つけてしまうこともない。

死んでしまうのは相手でも自分でも上記の事柄については大差ないけれども、今回は自分を殺すではなく相手を殺すが選択された。

 

どちらかが死んで、その結果双方の関わり合いにより関係性が変わる、ということがなくなる。そこに意味があるから死ぬ(殺す)必要があったのだと思う。別世界に追放、ではなく死んでもらう必要が。

 

物語の中なら簡単に人を殺せるんだけどね。あ、いや殺したいわけじゃないよ?

 

救済に恵まれずとも願わくばこれ以上大きな困難に見舞われたくない。もっと直接的に言うなら時間をかけて積み重ねた脆くはない幸せをそっと隠し持って生きていきたいんでしょうね。恐らくは。